~時計の修理に使う道具について~

 

こんばんは、ウォッチコンシュルジュ阿部です。

時計の修理を行うために、私たち時計修理技能士は

多種多様な道具を用います。

時計が好きな方の中には、機械自体に興味がある方も少なくないと思います。

自分の時計をちょっと弄ってみたい、そんな方々の参考になればと

ひとつずつピックアップしてご説明していきます。

 

 

【ピンセット】

時計は細かい部品で構成されており、指でつまむのは至難の業です。

それと直接肌で触れると、皮脂や汗の塩分によって錆びてしまいます。

用途に合わせ、材質も様々あります。

時計修理に従事する者にとってピンセットは延長した指先

以上の存在になります

鉄、ステンレス、カーボン、シリコン、プラスチック、竹など。

以下で時計修理に於けるピンセットに必要な要素を紹介していきます。

 

 

「絶縁性」

※画像は先端がプラスチック仕様

例えば「竹」や「シリコン」は電池専用だったりします。

その理由は、通電しない絶縁素材だからです。

ボタン電池は上下が+と-になっており、金属性のものでつまむとショートします。

長時間持っていると通電し、ピンセットが熱くなったりする恐れがあり危険なのです。

 

 

「耐磁性」

※画像上 材質:DUMOXEL 耐磁 一番用途が広い形

※画像下 材質:ニッケル合金 金でも傷が付きにくい

 

素材としては「ニッケル」や「DUMOXEL」「軟鉄」素材のものなどがあります。

時計部品でも特にアンティークのものは着磁し易い鉄で出来ている事が多いです。

部品の着磁は時計精度に確実に影響を及ぼします。
その為、ピンセットの耐磁性はかなり重要になっています。

 

 

「硬度」

画像は鉄で出来た厚みのあるものでホールド力があります。

 

部品の素材によって使い分けます。

部品がステンレスや鉄の場合は比較的硬い素材のピンセットを使います。

また部品にペルラージュやサテン仕上げなどが施してあるものや

金のような柔らかい素材で作られているものもあります。

ちょっとした傷さえも避けたい素材の場合は

掴む部品よりも柔らかいピンセットを使います。

「ニッケル」や「真鍮」などがそれにあたります。

 

 

「形状」

 

力が必要な場合は、先端が太く厚みのあるもの

細かい隙間を通して使う場合は、細く長いのも

ヒゲゼンマイを修正するときには、大きくRが付いた挟みやすい形状のもの

と、用途によって様々な形状を使い分けます。

 

※画像上 ヒゲゼンマイ調整用①

※画像下 ヒゲゼンマイ調整用②(私の場合はこちらが使いやすいです)

 

時計修理技能士は道具を買った状態そのままで使用する事はありません。

必ず使いやすい形状に成形してから使用します。

それは他の道具にも同じ事が言えます。

精密ドライバー然り、こじ開け然り・・・。

修行時代はまず、自分でこれらの道具を製作する事から始まります。

自分で作れないものは壊れた時直す事も出来ません。

時計自体についても同じです。

部品の構造が把握できていないと修理が出来ません。

その為、部品によっては一から作製する事も可能です。

 

※画像は先端を使いやすく砥石やサンドペーパーで加工したものです。

 

※先端は正確にぴったりと合う様に加工し調整します。

 

 

※砥石・やすり・サンドペーパーなど

今回はピンセットでしたが、次の機会にはまた

変わった道具をご紹介できたらと思います。

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