フランクミュラー　STORY

フランクミュラーは1958年スイスのラ･ショード・フォンで生まれました。17歳にジュネーブで有名な時計学校に入学し優秀な成績で卒業します。その後、彼は有名時計メーカーからのオファーを全て断り、どのメーカーにも属さない独立時計師スヴェン・アルデルセンに弟子入りする事でアンティークウォッチの修復をしながらその才能を磨いていきます。

特に興味を示したのが、複雑機構の代名詞トゥールビヨン（Tourbillon）です。フランス語で“渦”を意味する言葉ですが、時計では上の写真の脱進機・調速機全体を回転させることで、テンプやヒゲゼンマイにかかる重力の影響（姿勢差）を分散させ、精度を向上させる機構として19世紀に天才時計師アブラアン-ルイ・ブレゲが考案しました。

未だ腕時計では製作が難しいトゥールビヨンを更に進化させる事にフランクミュラーは情熱を傾けていきます。

当時28歳、独立時計師のフランクミュラーは、1986年のバーゼルフェアでジャンピングアワー機能付きの、レギュレーター・タイプの文字盤を持つトゥールビヨンという超絶複雑機構の腕時計を発表しました。その後も過去の時計師達の作品を修復する事で得たアイデアをベースに次々と今までにない複雑腕時計を作り上げるさまから、『ブレゲの再来』とも言われるようになります。

1992年ブランド創設と合わせて、1920年代に流行した芸術様式であるアール・デコスタイルをベースしながらも独自の3次曲線を描く事で今までの腕時計ケースには無い立体的な樽型ケースフォルムを生み出しました。

ケースの仕上げはもちろん、ガラスのサファイヤクリスタルまでも3次元曲線に沿って仕上げる拘りと「ビザン数字」とよばれるレタリングのアラビアインデックスを組み合わせたフランクミュラー独自のデザインコードを作り上げます。

どこから見ても緩やかな湾曲を描く“直線のない優雅さの極地 ”他にはないバランスのとれた美しさを表現しています。

究極の美を探求するフランクミュラーの時計は正確な時を刻みつつ、非日常的な遊び心に問いかける事で、道具としての時計を超え、着用者の感性や考え方をより豊かにしてくれます。

若くして世界的ブランドへと成長したフランクミュラーはIT分野が台頭する現代にアナログで、しかも高級な機械仕掛けは、疾風のごとく世界の人々を魅了していきました。

技術を追及するのではなく、“時”というテーマを投げかけ、白いキャンパスに絵を描くのと同じように、時計に“時”を描き、いくつもの違うテーマの時間を製作していきます。結果、高級機械式腕時計の存在定義に変革をもたらし、時計業界での新しいステイタスを確立しました。

ブランドを立ち上げた後に、自身の会社で別の２つのブランドを興しています。

“ピエール・クンツ”

ピエール・クンツ氏はレトログラード機構を得意とする時計師で、フランクミュラー氏の工房に勤め学んでいました。氏にその才能を認められ、その後ブランド「ピエール・クンツ」を立ち上げます。

“ECW(ヨーロッパ・カンパニー・ウォッチ) ”

イタリアの時計界のドンとも言えるロベルト・カルロッティ氏が2001年に立ち上げたブランドです。カルロッティ氏はフランクミュラー氏が世間に広く認められる前からの知り合いです。イタリアで築いた自身のネットワークを遺憾なく発揮し、フランクミュラーのイタリアへの普及に大きく貢献します。フランクミュラーがカルロッティ氏にECWを興させたのも、氏が持つセンスを高く評価しお互いに認め合い、本気で夢を語り合える家族同然の大切な仲間だったのではないでしょうか。2004年には他界されます。

有名な時計ブランドであれば、優秀な人物を「囲い込んでしまう」ことが多いですが、フランクミュラーは優秀な人物を囲い込まず、その「個性」を発揮できるように環境を整え育む事で、彼等を独立へと導きました。

この難しい判断は、メーカーへの就職を選ばずに独立時計師の道を歩んだフランクミュラー氏だからこそ成しえた選択ではないでしょうか。

ヴァンガード

2014年発表されたのが、ヴァンガード。一際目を惹くのがケースです。よりスポーティなイメージを強く打ち出す為、ラグを廃してストラップをケース内部で固定する一体型構造の方法をとりました。今までフランクはケースが大きいモデルに関して、ケースとストラップの間に微妙な隙間がありましたが、この構造にする事でケースとストラップが綺麗な曲線を実現させることに成功しています。