ピーター・スピーク・マリン

失われた時計王国イギリスの栄光

 

これまで世の中に輩出されてきた芸術的な複雑時計の数々は、突然この世に生まれた訳ではありません。14世紀末頃に誕生した教会の塔時計から始まり、16世紀に携帯できるようになったドラム型の時計、実用的な精度を実現した18世紀〜19世紀の懐中時計、そして20世紀に入って本格的に生産が開始された腕時計と、今までの長い歴史と技術の集大成としてこの世に誕生しています。そして、現在からは想像も出来ませんが、18世紀〜19世紀の懐中時計の時代、今のスイスのように、世界をリードする時計王国だったのがイギリスなのです。

18世紀後半に起きた産業革命によりイギリスは鉱工業の先進国となります。その後、大英帝国と呼ばれる世界帝国を築き上げます。その頃のイギリスの機械式時計は蒸気機関車と並んで、最も大きな役割を果たした機械のひとつに挙げられます。時計を使ってさまざまな時間を管理する事で工業生産の効率は飛躍的に向上しました。

 

またイギリスが「七つの海を制覇する」ことができたのも、イギリス人の時計師が高精度な時計、マリンクロノメーターを発明出来たことがあったからでしょう。この発明でイギリス海軍は自分がどこに居るのか、現在位置を正確に認識した安全な航海ができるようになり、その結果、世界No.1の海軍が誕生し、イギリスの世界制覇が実現したのです。

母国イギリスの時計作りの伝統とスタイルを継承した、芸術的な機械式時計を創作するべく立ち上げたのが「スピークマリン」です。

 

 

スピーク マリン

 

1968年にイギリスで生まれたピーター・スピークマリンは17歳でロンドンにある技術系専門学校『ハックニー・テクニカル・カレッジ』に入学します。時計製作の面白さ、奥深さに魅了され時計師を目指します。卒業後には、スイス・ヌーシャテルの名門時計学校『ウォステップ』に入学し4ヶ月のコースを履修してロンドンに戻ります。

 

時計店の修理部門に6年ほど勤めてその後、数社を経て複雑機構やオートマタ(からくり機構)付きの芸術的なアンティーククロック、懐中時計などを専門に扱う高級アンティーク店『ソムロアンティークス』に勤めます。ここでは主に17世紀から20世紀初頭の懐中時計の修復に携わり、電気もコンピューターもなかった時代に、これほどまでに素晴らしい機械を作り上げた時計師たちの情熱に、感動しそして優れた時計は、時代を越えて受け継ぐ価値があることを、身をもって体感します。修復を通じて、永久カレンダーやグランソヌリ、ミニッツリピーターといった複雑機構を学び、その仕組みに関する理解を少しずつ深めていきました。

 

更なる新天地をスイスに求め1996年、複雑時計開発の第一人者ジュリオ・パピ氏が率いる複雑時計開発の専門工房「ルノー・エ・パピ(現オーデマ ピゲ ルノー・エ・パピ」に入社します。彼はその後の人生を大きく左右する仲間達と出会います。この時期に更に自身の才能を大きく開花させて行きます。ルノー・エ・パピは、様々な時計ブランドのために複雑機構を製作し、提供する高級時計工房です。そこには優れた才能の時計師たちが集結していました。グル―ベル・フォルシィ創業者ローベル・フォルシィ氏とステファン・フォルシィ氏、現在A.ランゲ&ゾーネの設計・開発責任者を務めるアントニーデ・ハス氏などが在籍しており、まさに当時のエリート集団です。

 

その中でスピークマリンは、入社後すぐにグランソヌリの開発担当者に抜擢されました。「古い時計の修復をしていた私にとって、1からムーブメントを作ることはとても刺激的でした。そして才能豊かな同僚達からも、多くの刺激や感動を与えられました。彼らは、時計の夢を語りあう同志であり、遊び仲間でもあった。ルノー・エ・パピでの経験は、私にとって宝物です。」

 

時計に限らず、どんな分野でも、優れた才能は常に次なるステップを目指します。同士であった天才時計師たちは独立し、あるいは時計ブランドへと転職し、ルノー・エ・パピを離れていきます。スピークマリンもやがて「誰かのためではなく、自分のための時計を作りたい」との想いを強く持ち始めます。

 

そして2000年に独立。スイス・ローザンヌに程近いローヌに工房を構えました。そこで彼は「ムーブメントの設計、ケースなどの外装の構造、そしてデザインまで、すべてのプロセスを一人で行い、自分自身を表現した」と語る処女作

 

 

 

 

『ファウンデーション・ウォッチ』を作り上げます。重厚なゴールドのケースと美しい彫金が彩るダイヤルを組み合せた外装に、トゥールビヨンを収めた懐中時計です。

 

 

 

それが高い評価を得て、スイス独立時計協会アカデミー『AHCI』のメンバーに推挙された彼は、2003年のバーゼル・ワールドで、トゥールビヨン搭載の腕時計『ピカデリー』を発表する。

 

これに目を留めたのが、ハリー・ウィンストンでした。アメリカを代表するジュエラーは、彼にムーブメントの製作を依頼します。オーシャンプロジェクトのZ3はスピークマリンが開発したトゥールビヨンが採用されました。この時計の発表後に独立時計師ピーター・スピークマリンの名は、世界に認知されていきます。その後も自身の作品を製作するのと並行し、革新的な複雑時計を開発・製造するために6人のトップクラスの時計師が集結したブランド『メートル・デュタン』を発表。「こうしたコラボレーションは、私の時計製作の経験値をより豊かにしてくれます。彼らから学ぶべきことは、とても多く、私の作品にも様々な影響を与えてくれました。すべての経験は私の人生を豊かにし、作品に生かされるのです」

 

スイスのラ・ショー=ド=フォンにある自社内のアトリエでは、こだわりはデザインを含む、開発設計から革新的な複雑時計の製作、ポリッシュやコート・ド・ジュネーブを含むエングレービングなどの高度な装飾にまでおよびます。COSC 認定の高精度ムーヴメントを搭載し、クラッシックスタイルのなかにモダンテイストを取り入れたオリジナリティあふれる時計作りが世界中で多くの時計ファンの支持を集めている。

 

エクスクルーシブなタイムピースを求めるコレクターには、好みの装飾や機能を組み合わせ独創的で感動的なユニークピースをオーダーメイドでの製作もおこなっていました。

 

 

 

ヴィンテージ・トゥールビヨン MKⅡ

 

 

スピークマリンの時計で一番に目を引くのが、真円で骨太なシリンダーケースです。シンプルながら腕に乗せると時計の存在が際立ちます。スイス時計のデザインとは大きく脱した力強いラグはケースとの相性も良く、シリンダーケースを腕のカーブにフィットさせる為に斜め下に伸びています。品のある特徴的なハートシェイプの針がエナメルダイアルの上で時刻を知らせてくれます、懐中時計を彷彿させるリュウズは操作性にも優れ、何処を見てもスピークマリンと一目で分かるブランドアイコン要素がふんだんに盛り込まれたデザインです。

 

トゥールビヨンの受け石には最高級のムーブメントの証となるダイヤモンドがあしらわれています。

 

裏蓋側にはサーペント(大蛇)を思わせる曲がりくねった針を使用。地板には綺麗にエングレービングが敷詰められ、眺めるだけで高級感が漂います。中々市場には出回らない素晴らしい時計です。

 

 

常に高みを目指すスピークマリンの腕時計を身に着け、彼の持つ高い志をご堪能してみてはいかがでしょうか。

スピーク マリン TWG38W ヴィンテージ・トゥールビヨン MKⅡ 25本限定

Ref.TWG38W
ケース径:38㎜
防水:日常生活
文字盤:ホワイトエナメル(高温焼成)グランフー

パワーリザーブ:110時間
参考定価: 12,000,000円 (税別)

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